【1】ボード気密工法とは
従来の充填断熱工法は、室内側から外部に向かって
内装材→防湿・気密シート→断熱材→透湿防水シート→通気層→外装材
という構成になっており、防湿・気密シートにより室内からの湿気が壁内に
侵入するのを防ぐとと共に、気密性能を維持していました。
しかし、防湿気密シート張り、コンセントボックス、 設備配管廻りの気密工事は、
北海道や東北以外の施工業者は、不慣れで、とても面倒でした。
そこで室蘭工業大学の鎌田教授の研究チームによって施工性をを簡略化した
ボード気密工法が考案されました。
これは、防湿・気密層を分離する工法で、従来どおり防湿フィルムは内側に張りますが、
気密性を高めるための「先張りシート」が不要で、その代わり、合板やダイライト等の
構造用面材を柱の外側に取り付け耐力壁と気密性を面材で兼ねる充填断熱工法です。
したがって、筋交も不要になりました。
具体的には、内装材→防湿シート→断熱材→透湿性の高い面材+気密パッキン→
透湿防水シート →通気層→外装材という構成です。
湿気は透湿抵抗の低い方に移動する特徴があります。
したがって、外側に透湿性の面材があり、室内側から外側に向かって、透湿抵抗の
高いものから順次低い建材を配置していけば、 防湿シートがラフに施工されても、
湿気は外側に移動し通気層へ排出されるので、結露しません。
最も経済的で施工が簡単なのは、袋入りグラスウールを使うことです。
袋に付いた耳部分を柱、間柱、桁、土台部分に伸ばして、タッカーで留め、
石膏ボードで押えることで、簡単に防湿層を作ることが出来ます。
【 2 】 透湿抵抗値
湿気は、量が多いところから少ないところへ移動し、その量や時間は、移動する材の
透湿抵抗によって変わります。(但し、この性質は気密性とは全く関係が有りません)
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単位は、m3・h・mmHg/gという記号で表され、1m2当たり、1時間に1gの水分(湿気)を
通すのに、いくらの気圧差(mmHg)が必要かということです。
表による合板の透湿抵抗値は10.3に対し、ダイライトは3.0で、合板よりもダイライト
の方が3倍湿気を通しやすい性質を持っています。
ダイライトは、合板よりもより多くの湿気を通過させるために結露しにくいということです。
また、防湿気密シートの代表的な材料であるポリエチレンシートの透湿抵抗値は425
に対して、外壁に貼られる透湿防水シートは0.09です。
これは、防湿気密シートは完全に湿気をせき止め、透湿防水シートはどんどん湿気を
通過させる材料であることか分かります。
言葉はよく似ていますが、防湿気密シート(ベイバーバリア)と透湿防水シート
(タイベックが有名)は似て非なるものです。
このように、面材の透湿抵抗値を調べ、どの面材を使うかチェックすることが重要になります。
数値の大きい方が湿気を通しにくい
材料名 | 厚さ | 透湿抵抗 | 備考 |
ポリエチレンシート | 0・1 | 452・00 | |
調湿シートザバーン |
| 20〜30
| (*1) |
|
|
| |
石膏ボード | 9・0 | 0・78 |
|
|
| ||
防湿層付きグラスウール | 50・0 | 17・00 | |
グラスウール | 100・0 | 1・25 | |
セルロースファイバー | 100・0 | 1・25 どのように木材や組成のデッキを構築する | |
発泡樹脂系断熱材 | 50・0 | 30〜40 | |
|
| ||
構造用合板 | 9・0 | 10・30 | 壁倍率2・5 |
ダイライト | 12・0 | 3・00 | 壁倍率 3・0 |
透湿防水シート | 0・2 | 0・09 |
(*1)ザバーン・・・米国・デュポン社性の調湿シートで透湿抵抗値20〜30
【3】 地域別の透湿抵抗の内外比
内部結露を起こさないためには、断熱材の外側を基点として、 内と外の透湿抵抗の差が重要になります。
この数値は、新省エネ基準では、T地域の北海道は外1:5内 で、
瀬戸内の温暖地W地域は1:2となっています。
この比を参考に、内外の使う材料を選定しなくてはいけません。
構造用合板を面材として使う場合は、地域と透湿抵抗の内外比をチェックしましょう。
【4】 夏型結露と構造用合板について
夏型結露は逆転結露ともいい、夏場に室内側が冷房されている場合、
暖かい空気が冷やされた防湿層に触れて結露するというものです。
温暖地で外側の面材に透湿抵抗の大きい構造用合板を使う場合は、
日射により壁体内が高温になると、木材や合板から水蒸気が放出され、
一時的に飽和水蒸気圧になり微量の結露をします。
しかし、通気層から水蒸気が逃げたり、木材や合板が吸湿したりして、
飽和水蒸気圧以下に戻るため、木材の腐朽や断熱材への影響はないと、
実際の経験や結露計算、実験等で実証されています。
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それでも心配な場合は、防湿層に透湿抵抗が高い防湿・気密シート(ポリエチレンシート)
の代わりに、防湿・調湿シート(可変透湿シート)の「ザーバンBF・デュポン社」や
「インテロ ・モル・建築エコロジープロダクツ社」をお勧めします。
これらは、相対湿度によっては透湿抵抗値が変動するという特徴を持っています。
通常は透湿抵抗が防湿・気密シート並みに高いため、室内側の水蒸気の壁内への
侵入を食い止め、相対湿度が高くなる夏型結露時には透湿シート並みの低い
抵抗値になり、壁内の水蒸気を室内側に排出し、壁内の高湿化を抑制して結露を防ぎます。
但し、「ザバーンBF 」などは、通常であれば、構造用合板より、高い抵抗値が出るが、
より透湿抵抗が高いOSBほどの抵抗値が出ない可能性があります。したがって、
OSBとの併用は理論上危険です。
また、こういう夏型結露は充填断熱だけに起こる現象という意見があるが、
外張り断熱の発泡プラスチック系断熱材と木材周辺でも起こる現象です。
【5】 構造用面材の種類
耐力壁として使われるものとして、接着剤を使って、透湿抵抗が高い構造用合板や
構造用OSBがありますが、最近は透湿抵抗の低い構造用面材として、
ハードボード(硬質繊維版)や「かべ震火・エーアンドエーマテリアル」
「ダイライト・大建工業」「モイス・三菱商事建材」
などの商品があります。
●構造用合板
合板のうち、構造耐力上主要な部分に用いる目的で作られたものをいう。
他の合板やボード類に比べ、釘の保持力が非常に高く、強固に取り付けることが
できるので主に木造建築物の、壁下地材・床下地材・屋根下地材として用いられる。
構造用合板は、日本農林規格 (JAS) で定められている。
● OSB(配向性ストランドボードOriented Strand Board) Strand Board)
原料として低質の広葉樹を用い、薄い削片状にしたものを配向させて積層、
接着したものである。
原料のエレメントは、パーティクルボードに用いられるものより面積が
大きく薄い形状をしており木材の異方性をより多く残している。
構造用パネルとも呼ばれ、木造建築物の壁下地材として、構造用合板の
代わりに用いられることも多い。
木材の小片を接着剤と混合し熱圧成型した木質ボードの一種である。
●パーティクルボード
木材の裁断サイズにより大きく分類され、 OSB>パーティクルボード>MDF
の順に裁断は小さくなる。配向性はない。
裁断が細かくなるにつれ生木本来の性質は失われ、抵抗力が弱くなり、
カビ易くなってゆく。
原料としては主に解体廃材等が用いられる。
● MDF (medium density fiberboard・中密度繊維版)
木質繊維を原料とする成型板(ファイバーボード)の一種で、木材チップを蒸煮・
解繊したものに接着剤となる合成樹脂を加え板状に熱圧成型したものである。
同じ木材チップ材を原料とするパーティクルボードや配向性ストランドボード (OSB)
に比べて構成要素(セグメント)が小さく、表面だけでなく木口部分も平滑である。
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